対象者はミスターAI

一流の探偵は景色と同化出来る。その真意を説明すれば、サラリーマンの多い通勤時はサラリーマンになり、住宅街では住民や作業員、営業マンになり、観光地では観光客、ラブホテル街ではカップルとなり、対象者にとって、目に映る景色の一部となることです。

目につく探偵とは景色に溶け込んでいない、対象者に違和感を与えてしまう格好、雰囲気の人物になります。

一概に目立つ格好をしているから、目につくとは限りせん。
ビジネス街でラフな格好をしていれば目につきますが、観光地ではラフな格好はごく自然であり、目につくことはありません。逆に観光地でスーツ姿は目立ちますね。

私が心掛けていることは場所と状況により、通行人の格好も含め、総体的に合わせることです。服装はもちろんですが、行動所作も合わせることで、風景の一部になることが出来ます。

警戒のある対象者が、尾行をする探偵を見つけ出そうとしても、その他大勢と変わらない探偵を見つけ出すのは簡単ではありません。これが溶け込んでいない探偵だと目につき、何度も見られているうちに、特定されてしまう結果となります。

なので普通に目立つイケメン、美人は探偵には向いていません。当然、奇抜な髪の色やタテゥーは論外となります。

前置きが長くなりましたが、本題「ミスターAI」に入ります。

対象者は泉州地区でサラリーマンをしている50代の課長補佐です。

依頼者より浮気の可能性があるので、女性と接触する可能性の高い週をピッタリマークしてほしいとのことで、ガッツリ月〜金の調査となりました。

初日の調査、自宅から出たのは午前7時30分ピッタリ、最寄り駅に入り、改札を通過し、勤務先へ向かう電車に乗車したのは7時52分でした。

その後、勤務先の最寄り駅に到着、改札を出て、コンビニでドリンクを購入。喫茶店でコーヒーを飲み、時間を潰してから、勤務先に出勤しました。

出勤後は勤務先の出入口を張り込みし、対象者が休憩時間のタバコ休憩や昼食を取りに出入りする姿を確認します。

退勤時間に勤務先から歩き出た対象者を尾行しますが、帰宅ルートを戻り、動きはなく帰宅しました。

調査初日から3日目、対象者の行動はまったく同じでした。報告書を作成していると気付いたのですが、自宅から出る時間、電車に乗り下りする時間、喫茶店の入店時間、出勤時間に至るまで、1分の狂いもないのです!

翌日、代表にこのことを報告すると「ミスターAIですね」とのこと。

AI…つまり、ロボット!確かに決まった行動パターンだと時間も決まってくるかもしれませんが、1分の狂いもないとは…。

結局、残りの2日も動きはなく、驚いた事に、喫煙時間までも決まった時間に出入りしていたのでした。

まさに、ミスターAIで間違いない!!

盆休み前の調査でしたが、暑さの厳しい中、スーツを着て満員電車通勤はハードですね。1週間限定のサラリーマン体験でしたが、毎日通勤してる方々には頭が下がります。

 

通勤ラッシュ