その日の浮気不倫調査は対象者のマンションで、張り込みから始まった。
出入口を2点張り、2名で対応する。
開始時には小雨だった雨が1時間後には本降りとなり、見通しも悪く状況はあまり良くない。
対象者の移動手段は徒歩、自転車、車両なので、どれでも対応出来るように、気を抜けない。
雨が小降りになったころ、対象者がマンションの駐車場側から、通用口を歩き出て来た。車両には乗らず、徒歩で移動を開始する。
1名が徒歩で尾行につき、もう1名は車両をコインパーキングに入れ、すぐに尾行に追いつく。(マンション周辺は一方通行が多く、車両での追尾は厳しい)
2名で距離を取り、尾行を続行。曽根崎通りを横断したところで、対象者が走り出した!
走って行く対象者の先に、タクシーがハザードを点灯し、停車している。
すぐ後方を追尾していた熱血探偵が無線で後方のベテラン探偵に状況を伝える「マルタイ前方にタクシー!後部席に浮気相手!」
ベテラン探偵は間髪入れずに、タクシーの進行方向に全力疾走している。
進行方向は御堂筋!考える前に体が動いている。熱血探偵は対象者がタクシーに乗り、浮気相手と合流するシーンを撮影し、タクシーのナンバーを無線で連呼する。
タクシーがゆっくりと移動を開始したときには、ベテラン探偵は御堂筋の少し手前まで来ている。
熱血探偵は後続のタクシーを見つけ、乗車しようとするも、先客あり…
駄目だ、走って追うしかない。
ちょうど、その頃に不倫カップルの乗るタクシーは無情にもベテラン探偵の横を通り過ぎ、御堂筋へ合流していた。
御堂筋に出たベテラン探偵が流しのタクシーに飛び乗り、「探偵です!先行しているタクシーを追って下さい!」と告げると、そのタクシードライバーは「よっしゃ!タクシーのナンバーは?こっちやな!」とフル加速の神対応。
ベテラン探偵を乗せたタクシードライバーはどんどん加速し、前方の車両を追い抜いて行く。
長年の経験から、かなり先行されているので、無理かもしれないと諦めかけていたベテラン探偵は「これなら追いつくかも」と荒くなった呼吸を整えつつ、前方の車両に目を凝らす。
タクシードライバーもナンバーをチェックしながら「こいつか?よし次のタクシーは!」と全力で先行するタクシーを捉えようとしている。
数分後、「あれじゃないか!」タクシードライバーが叫ぶ。ベテラン探偵がカメラをズームし、ナンバーを確認。「あれです!!」なんと、追いつくことに成功したのだ!
スピードを落とし、対象者達のタクシーを尾行しつつ、タクシードライバーに聞いたところ、以前にも同じようなパターンで尾行をしたことがあるとのこと。
なんと、このドライバーさんは経験者だったのだ。しかし、対応の速さ、ドライブテクニックは探偵も驚きのスキルだった。
無事に尾行を成功し、不倫カップルの乗るタクシーがシティホテルのエントランス前に停車する。
後方に停車し、「助かりました!お釣りは取っといて下さい。」と料金を渡すと、ドライバーさんは「ありがとな、頑張れよ。」と笑顔で颯爽と走り去ったそうな。
その頃、熱血探偵は御堂筋を全力で走り続けていた…。