熟練探偵の警戒案件対処法②

調査依頼を受けたのはフランチャイズ契約をしている支部長さんからでした。

中々に手強い相手で、支部長さんが調査着手した際には対象者と不倫相手が交互に移動しつつ、周囲を見回していたそうです。尾行も難易度が高いため、警戒マックスの時点で解除したとのことでした。

そんな対象者達の説明を受けて、熱血探偵は久々に血が滾る気持ちになりました。

依頼者さんが何とかして、証拠を押さえてほしいと言っておられる。そんな、すがる思いに応えてあげたい!

調査日は快晴です。勤務先から出てきた対象者の尾行に入り、様子を見ます。

先ずはバス停でバスに乗り、駅に向かいます。2名体制で尾行していますが、バスの車内で対象者が、こちらを見ているのがわかりました。

対象者はキャリーバックを所持しており、そのバックを抱え込み、バスの後方を見ていました。ここで、慌ててはいけません。どこを見ているかを見極めることが大事です。

そこで熱血探偵が判断したのは、こちらを見ているのではなく、バスの乗客の全員(7人ほど)つまり全体を見ていると判断しました。

バスが駅に到着し、対象者が駅構内に向かいます。ここで、振り返りが2回ありましたが、問題ありません。

熱血探偵と相棒は人混みの中に巧みに紛れて、追尾者の判別をつけられないようにしています。

駅構内に入り、対象者はエレベーターに1人で乗りました。ここでは同乗せず、冷静に手分けして、インカムで連絡を取りつつ、駅の改札がある地下1階に個別で向かいます。

案の定、対象者は休憩スペースの長椅子に座っていました。ご丁寧にエレベーターの出入口を見張っています。こちらはエスカレーターを使用し、対象者の背後を取ることができたので、若干、有利になりました。

5分ほど経過し、対象者が立ち上がり、改札に入りました。こちらは交互に相棒と尾行をしますが、通行人が少ないため、距離を取ります。

対象者が休憩ルームに入りました。ガラス張りなので、中が見えますが、対象者からもこちらが丸見えです。

そこでも数分間、時間をおいてから対象者が動き出しました。そして、ホーム階に降りるエレベーターに1人で乗りました。

こちらは、階段で駆け下り、エレベーターから出るところを、見つからないように、見張ります。

ところが、対象者は出てきません。意図したのかは不明ですが、こちらが、確認する前に対象者はエレベーターを降りて、すぐにエレベーターの裏側のホームの通路を反対側に歩いていました。相棒が近づけない状況のなか、何とか捕捉してくれました。

そして、一番奥のホームの休憩スペースの長椅子に座ったのです。

「何なんだ、コイツは!ハンパなくヤバい対象者やで!」と相棒と話しつつ、後方を目立たないようにキープします。まだ、調査が始まって1時間程度で見逃すわけにはいきません。

5分が経過したところで、対象者が立ち上がり後方にある、共用トイレに入りました。そこから、中々出てきません。

他に出入口はなく、通り抜けはありえないのですが、気になります。

停車している電車から、間もなく出ますとのアナウンスが流れる中、対象者が出て来ました。急ぎ足でその電車に対象者が乗りました。

熱血探偵と相棒は離れたところから、見られないように張り込みしていたため、不意を突かれた形です。

アナウンスがもう一度、流れる中、猛ダッシュでホームを駆ける相棒と熱血探偵!

相棒が先に電車に飛び乗りました。対象者は電車の出入口を睨んでいます。ジリリリ!電車の扉が閉まるタイミングのところで、熱血探偵はまだ電車の数メートル後方でした。

しかし、車掌が「乗ります!待ってー」の熱血探偵の声に気付いてくれました。

「もう出ますよ」と冷静な声に感謝しつつ、何もなかったように荒い呼吸を抑えながら、電車に乗り込むと真正面に座る対象者がこちらを見ているのが、わかりました。

勿論、目線は合わせず、ゆっくりと歩いて隣の車両に移動して、対象者を監視します。

ギリギリ間に合いましたが、ここまでは序章に過ぎません。この続きは次回、ブログにアップしますので、お楽しみに。