熟練探偵の警戒案件対処法③

前回はギリギリのタイミングで対象者が乗った電車に飛び乗り、尾行を継続できたところまでを書きました。

ここまででも、かなりの警戒行動をする対象者でしたが、電車内でも対象者は周囲に目を光らせているようです。
対象者の車両は最後尾で対象者は一番後方の座席に座っています。

熱血探偵と相棒は隣の車両から対象者を監視しています。監視しながら、交互に見えない場所に移動して服装を変えます。
熱血探偵と相棒は3パターンほどの着替えを常備しており、この時はシャツを脱ぎ、黒Tシャツから白へ変更です。

警戒の強い対象者にはあらゆる手段を駆使して対応するのが真のプロです。
これで、別人になった事になり、ここまでの尾行をリセット、新たな気持ちで追尾ができます。気分的にも大分、楽になります。

さて、対象者は3つ目の大きめな駅で下車し、ホームを上がり、駅構内の共用トイレに入りました。すぐさま、人混みの多い場所を見つけ、2方向から監視します。
ここでも、中々出てきません。


暫くして、相棒から対象者が出て来て、コンビニに入店したとの連絡が入りましたが、こちらで見ていた感じでは対象者ではありません。

念の為、コンビニに確認に行くと服装、背恰好が似ている別人でした。調査中にはよくあることなので、慌てず対応するのが必須です。相棒と対象者の服装、バックなどの特徴をすり合わせ、面取りの精度を上げます。

対象者がやっとトイレより出て来て、改札へ向かいます。ここではすぐに追わず、様子を見ます。
改札に向かった対象者は改札手前でUターンし、正面を睨みながら歩いて行きました。すれ違う通行人を吟味しているようです。尾行者はお前か!と言わんばかりの睨みようです。

ここまでの対象者の行動パターンを見てきて、こちらも大分慣れてきました。
この対象者は無駄な動きが多く、姿を晒して尾行者を探す行動が、まるで「自分はここにいるよ」とアピールしているようで、人の多いところだとやり易い相手です。笑

階段でホーム階に下りた対象者はホームの端まで歩き、階段下の影に隠れています。
かろうじてキャリーバックの一部が見えているので姿を隠していても捕捉できています。

こちらはホームの線路寄りに二手に分かれて、監視を続けます。対象者が階段を上がり、改札階に行ったり来たりを2度繰り返しました。かろうじて、駅の利用者が多いので捕捉できています。

対象者が駅員に紙切れ(乗車券)を見せて、ホームの一番端に行き、柱に隠れました。
そろそろ、お目当ての電車がやって来るようです。奈良から京都間を走る観光特急「あをによし」がホームに入って来ました。

相棒と対象者を見逃さないように、ホームに並ぶ利用者に紛れて監視します。
電車のドアは開いているのに、対象者は動きません。「あれ、見当違いか?」と考えていると、間もなく電車が出発するとのアナウンスが流れました。

その瞬間、対象者が猛ダッシュで私達の前を通り過ぎ、観光特急の先頭車両に飛び乗りました。ヤバい、ドアが閉まる!
熱血探偵は即座に相棒に指示を出します。先頭車両を挟み打ちにするため、先頭車両の後方の出入口に入って!
こちらは先頭の出入口に素早く入ります。間一髪で間に合いました。対象者は既に車両の中に入り、姿は見えません。ですが、反対側の出入口は相棒が押さえているので、大丈夫です。

この電車の1・3・4号車はツインシートの座席配置となっていて、座った人を包み込むようなシートは、家具メーカーによる特注デザインだそうです。

宣伝文句で観光特急ならではのあしらいで、上質な時間を体験いただけます。だそうです。不倫カップルにとっては贅沢な京都までの旅路となりそうです。

熱血探偵と相棒は電車内に入ることなく、出入口のスペースにて、身を潜めて対応します。暫くすると、車内からカップルの楽しげな笑い声が聞こえてきました。やはり、車内の指定席を事前に取って、車内で合流したのは間違いないようです。

なんとまあ、手の込んだやり方でしょうか。不倫旅を愉しんでいるようで、ムカつきますね。
こちらとしても怒りとともに、俄然、やる気がかき立てられます。
必ず、不貞の証拠は押さえてやると、熱血探偵と相棒は久々に本気モード全開です。

暫くすると車掌さんがやって来たので、電車代をその場で支払いました。相棒とはインカムで連絡を取り合っているので、車掌さんがやって来るのは事前にわかっています。料金を支払っている間も楽しそうな対象者達の笑い声が聞こえてきます。プライベートな空間で警戒心も薄れているようです。

30分後に京都駅に到着しました。熱血探偵と相棒は電車のドアが開くと同時に電車を飛び出し、人混みに紛れます。

さてさて、警戒心なく楽しく2人で出て来るかな…と思いきや、対象者が先に出て、その後方を少し開けて、不倫相手の女性が現れました。しかも、周辺を見回しながら!


熱血探偵と相棒は「どんだけやねん!」と呟きつつも、「振り返りあるけど、人混みから捕捉なら問題なしやな」と尾行を続行します。
今回はここまで、次回をお楽しみに。