探偵必須の心得

調査の舞台となったのは堺市のとあるマンション。

浮気調査の案件で既に数回調査に入っています。

前日の夜遅くに対象者と浮気相手の女が、マンションに入って行く証拠は既に撮影しています。

対象者は依頼者の夫であり、警戒心の高いなかなか手強い相手です。
女の住むマンションの出入りには、かならず周辺の様子を窺い、見慣れない車などは近づいて確認するほどです。

私達は2班に別れて、マンションの出入り口を押さえています。
対象者が出てくれば証拠を100%押さえる体制であり、絶対に成功させる自信もあります。

張り込みをスタートしたのは夜21時ごろ。出入り口に目を凝らし、集中します。
一瞬の油断が見逃す原因となるので気を抜くことは出来ません。

夜が明け、朝を迎えましたが、対象者が出てくる気配はありません。

調査員は交互に休憩にならない休憩を取りながら、張り込みを続けます。

やがて正午を過ぎる。日差しも暖かく眠気が襲ってきます。
どうしても瞼が重く、眠気が何度もやって来るときに思い出す言葉があります。

「探偵は依頼者の人生を背負うくらいの心構えがないと務まりません。

少しの気の緩みが依頼者の人生に大きく影響するのです。

依頼者が探偵に未来を託していることを肝に命じてください。」

私がまだ見習いのころに、代表から教わった探偵の心得。

この言葉を思い出すだけで不思議と眠気が吹き飛ぶ。
探偵ならこの言葉の重さを理解することができると思います。

調査員にとって、その調査が数ある中の一つであっても依頼者にとっては人生唯一の瞬間かもしれないのです。
眠い、しんどい...そんな泣き言など入る余地は皆無です。

そして、夕方17時前、対象者が姿を現しました。相変わらず周辺を警戒しながら通り過ぎて行く。
パートナーである依頼者様を裏切り、浮気相手の女のマンションに出入りし、警戒までして..

私は依頼者様に熱血探偵と言われる事がありますが、こんな理不尽なことをする人間を許すことが出来ないですし、辛い目にあっている方を何とかしてあげたい気持ちが強いのかもしれません。

長時間の張り込みを終えて、代表と合流。
証拠画像を確認し、調査が終了しました。

無事に調査を終えて、安堵感と充実感を味わいながら、みんなで飲むコーヒーは格別に旨いです。

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